「縁」というのは不思議なもの

[読書の繰言:戻らぬ日々 4]

「ゲーデル・エッシャー・バッハ」 著:ダグラス・R・ホフスタッター

ISBN4-8269-0025-2 (読始:1985年 - 読了:2021年)

 本書は1980年度ピュリッツァー賞を受賞したベストセラーだが、ここで取り上げる理由はそれではない。上の読始から読了までをご覧あれ、36年掛かっている。ワタシが「読破を断念しなかった期間最長の本」だからである。

 1985年に社会人になり、最初の寸志で本書を購入した。学生時代に借りて読んだ同著者の「マインズ・アイ」に強い印象があり、本屋さんでホフスタッターの名前を見た瞬間に購入を決めた。だが購入まで2週間ほど悩んでいた記憶がある。4,800円。それまで貧乏で高いハードカバーなど買えなかったので、結構な踏ん切りが必要だった。しかし昭和の新入社員に暇はなし、買ったはいいが内容の難しさもあって2章で読むのを止めてしまった。だが、途中で放り投げた本はいくらでもある。図書館で借りた本なら読まずに返すだけ。購入した積読本は、引っ越しのタイミングで「もういいや」とかなり処分してしまったのに、本書だけは読みもしないのに捨てずに手元に置き続けた。なぜだろう

 最後の会社では泊り掛け出張が多かった。2020年夏に出張の準備をしていた時、本書が目に留まった。ふと「続きを読んでみるか」という気になりスーツケースに放り込んだ。時はコロナ禍真っ最中で全国自粛の嵐。幸か不幸か遊びに行く所が無くホテルの部屋で読み始めたが、なにせ大部な作品なので簡単には読み終わらない。これをきっかけに出張先に必ず持って行くようになった。2021年ふたたびの夏まで一年間、日本各地を持ち歩き、ついに京都の鴨川河原、木陰のベンチで缶ビールを片手に読み終わった。ふっ、と小さなため息をつき目を上げれば、きらきら光る鴨川の水面。マスクを外した子供たちがボール遊びに興じている。

 本に限らないだろうが、「縁」というのは不思議なものだ社会人になって初めて買った本の「不思議の環」が社会人最後の仕事で閉じる。悪くないご縁だった



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