初めて徹夜で読んだ本
[読書の繰言:戻らぬ日々]
「幼年期の終わり」著:アーサー・C・クラーク
ISBN(未対応時代) (読了:1975年ころ)
いまさら内容の説明は要らないだろうSF界不朽の名作。この本を凡人のワタシがわざわざここで取り上げるのは、ワタシが徹夜で読んだ最初で最後の本だから。有名なSFという事で図書館から借りてきて、寝る前に布団の中で読み始めた。一気に読み終わったら朝だった。
たぶん中二の春だったと思う。年齢的にも、春という季節も、誰もがちょっとオカシクなる時期。それから四半世紀経ったある時、「中二病(伊集院光氏ご命名)」という言葉を聞いて、「あっ、あれは中二病だったんだ!」とハタと納得。
だが本書を中二病本で片付けるのは全くの間違い。壮大なストーリー、「未来の記憶」という仕掛け、バッドエンドの中に輝くとてつもない希望。内容は「堂々王道まっしぐら」なSFだ。いま読めば粗も目立つだろうし、21世紀の現代人には驚きのストーリーではないだろう。だがそれよりも、SFという個人の感情・情動に重きを置かない小説様式のなかで、登場人物であるカレルレンの悲しみがジワジワ染みて来る稀有な作品である。この情動、中学生の当時のワタシには何も分らなかっただろう。自分自身が決して到達できない孤高の存在を遠くから見送る彼のうしろ姿の物悲しさや、「子供は、いつまでもあなたの子供では居てくれない」というダブルミーニングを、読後30年も過ぎて唐突に理解したのは何故だろう。名作は、ふとしたきっかけで意識に浮上してくる何かを持っている。
ともあれ、本というのは出会いの年齢も重要だ。「巻を措く能わず」という言葉があるが、本当に「巻を措け」なかった体験はあれっ切りだ。それなら中二病も悪くないね、天才かよ伊集院。
(本書が面白かったら、同著者の「楽園の泉」も一読をお勧めする。ストーリーはまるで違うが、エンディングがカレルレンへのオマージュに感じられた。前著で中二病を発症したワタシだけかもしれないが)
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