ハートに火をつけて
[日々の繰言] 熱気と静寂と
産業用装置のメンテナンスをしていた、今から2年くらい前のお話。都内某大学の研究室からスピンアウトした宇宙ベンチャーに当社の装置が納入されていて、整備でそのオフィスを訪問した事がある。現場の雰囲気はまるで大学の研究室。他のベンチャーにもそのような雰囲気はあったが、ここにはそれとは比べ物にならないほど濃厚な「研究室」感があった。
無造作に置かれた計測器、配線の絡まる実験台、ホワイトボードに殴り書きされたチャート。そして「何が何でもコレを動かしてやる」という燃えるような執念と穴が開くような集中力が充満した、あの独特の熱気と静寂と。40年前の大学研究室と何も変わらぬ雰囲気が目の前にあった。ワタシが就職した1985年ころの電機メーカの開発部門にも、「研究室」の空気は辛うじて残っていた。だが10年も経たぬうちにその熱気は空調の効いた会議室の空気に入れ替わってしまい、日本の電機メーカーはどこか元気がなくなったように思う。
若い人が喜んで参入する仕事が「面白い仕事」である。偶々その日は高校生が見学に来ていた。男女混成の6人くらいの集団で、引率の若い女性教員がおひとり。大学生といっても通じるような若い社員が説明をしていたのだが、高校生よりもむしろその引率の先生の方が見学にのめり込んでいて、技術的な突っ込みをさんざん入れていた。女生徒が苦笑いで「あの~、センセイってば」と袖を引っ張って止めに入っていたのが微笑ましかった。
生徒を引率してきたはずの先生自身が目の前の技術と熱気に己の立場を忘れ、また学生時代に戻った気分で前のめりで突っ込みを入れている。そして、それを呆れながらも何となく好ましく思って見守っている生徒たち。
「大人が本気でワクワクできる世界があるんだ」
何年後かに「あの時の先生の姿」を追って、宇宙や新しいモノづくりの世界へ飛び込んでいく若者が必ず現れるだろう。
あの先生に教わっている生徒たちは幸せだ。
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