思考ダダ洩れ爺さん

[日々の繰言] 「目かすみ、口ゆるむ」

 10年くらい前、調べものをするのに東京の国会図書館に頻繁に通った事がある。平日のみ開館なので、利用者は研究者、大学生、切羽詰まった調査員(ワタシだな)などが中心だと思うのだが、(たぶん引退した)老人も多かったりする。基本は閉架図書館だが、一階には開架式で「基本図書」を自由に利用できる閲覧室がある。ワタシの調べものは主にその部屋で用が足りたので、4人掛けの長机に調査資料を広げていた。

 ある日、ワタシの隣の机で、学生風の男性と初老の男性が調べものをしていたのだが、初老の男性は資料をめくるたびにページに顔を近づけたり遠ざけたりしながら「ほお」「そうかそうか」「えっ」「なるほどねぇ」という相槌を打つ。さほど大きな声ではないのだが気に障る。当時もう半老人のワタシでもイラつくのだから、同じ机に座っていた若い学生にはたまったものじゃない、ついに切れてしまった「おい、いい加減にしなよっ!」。結構な大声で怒鳴ったので何事かと司書がすっ飛んできたが、若い学生は司書に「すみませんでした」とすぐに謝り、荷物を手早くまとめて出て行った。それを見ながら件の老人、「常識のないやつだねぇ」やれやれと首を横に振る。「ジジイ、オマエが原因だろ」と言いたくなったが、まぁ止めておいた。

 「昔からの言い伝え」には、後から「ああ、そういう事か」と納得するものがある。「年を取ると『目かすみ、口ゆるむ』ようになる」という言い伝えを引いたあるエッセーでは、「口ゆるむ」を「食べたモノが口の端からボロボロこぼれる様になって悲しい」という意味で使っていたが、図書館のその光景を見て、「ああ、これも『口ゆるむ』ってやつか」と妙に納得した。

 先日、自室で本を読んでいて「はぁ、なるほどねぇ」という声が自分の口から出てしまった。何だよ、あの「思考ダダ洩れ爺さん」とおんなじじゃん。以前から「目かすみ」だったけど、ついに「口ゆるむ」まで来てしまったか。ガックリだよ。

コメント

このブログの人気の投稿

これで花粉が無ければねぇ

木陰であやうく ボケ老人

「ナンシー関 対談集:無差別級」 ナンシー関

食べること 生きる基本だ 忘れるな

「月光」 林完次