男を出せ!

[仕事の繰言] 英語の勉強、その前に。

 とあるテストセンターのTOEFL監督補助仕事で食いつないでいた2012年ころのお話。TOEFLは欧米大学への進学には必須な英語能力試験で、月十回程度の受験セッションに毎回けっこうな数の受験者がいた。(「若者の留学離れ」をマスコミは嘆くが、この盛況を見て「ホントに取材してんの?」と思いましたよ。)

 TOEFLは世界共通ルールで開催されるため、日本人からすると戸惑う事も多い。一番致命的に異なっているのが「本人確認書類」の有効条件だ。「本人直筆サインのある、官公庁が発行した顔写真付きID」という条件を満たす日本のIDは「パスポート」以外に無い。このためチェックイン時にトラブルが起きやすく、「本人直筆サインのある」を見落として自動車免許しか持ってこない受験者がたまにいた。

 その中で印象的なのが「30代後半、バリバリエリートスーツ」風の男性だった。エリート道を順調に歩んできて「ここらで米国留学してMBAでも取ったる。おれスゲー」感のある人(完全な邪推です)だったが、運転免許しか持っておらず受付で揉め始めた。対応したのが試験会場責任者である女性だったのだが、「直筆サインのあるIDが必須です。世界共通条件で受験要綱にも明記されております」と理路整然と拒否理由を説明した瞬間に、その受験者が「おまえでは話にならん!男を出せ!!」と切れた。

 はぁ?久々に聞いたぜ「男を出せ」。彼女は動ずることなく毅然と「私がここの責任者です」。隣で控えていた監督補助の男性(目が完全に怒っていた)がガバっと立ち上がり「あちらでお話しましょう」と控室を指さした。このダブルコンボを予想していなかったらしい愚か者は、いきなりしょぼんとなりぶつぶつ言いながら引き上げていった。その後ろ姿を見ながら、監督補助の男性は「あいつは英語を勉強する前に、もっと別の事を勉強すべきだったね」と小声で吐き捨てた。

 エリート(気取りの)諸君、そういうことだ。

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