うしろ姿を見守る特権

[まあ座れや] 高校卒業認定試験

 零細個人事業主稼業では食えないので、都内の某テストセンターでTOEFL試験監督補助のバイトをしていた。その時のちょっとした失敗が切っ掛けでサイトマネージャーに逆に評価され、別の仕事もさせてもらうようになった。(余談:社会人二年目の失敗でもそうだったが、「失敗が評価される」という事が多かった。たぶんラッキーな人間なんだろうワタシは。感謝します、だれに感謝していいかわからないが)

 その別の仕事で、某国の「高校卒業認定試験」というとても珍しいペーパーテストを監督する機会があった。受験者は一人。失礼ながら、もうお婆さんと言ってもよい年齢のご婦人だった。某国の公用語は英語なので試験問題は英語だ。しかしこのご婦人、チェックイン時の本人確認IDは日本のパスポート。ワタシとの会話も自然な日本語で、堂々たる「日本の上品なお婆さん」だ

 試験は何教科かあり、途中昼休みをはさんで一日掛かりの試験だったと記憶している。当方は試験「監督」が業務なので試験内容については関知せず、試験委託元の指示書(英語なのよこれが。読後に理解度試験をさせられました)に厳密に従い粛々と監督するだけ。お婆さんが黙々と答案用紙に向かっているのを、後ろから監督していた。全ての試験科目を消化し、最後に答案用紙を回収して無事終了。「お世話になりました」と上品な微笑みで頭を下げて静かに会場を後にされたが、「この方は、なぜ今の年齢になって高卒認定資格を、それも外国の資格を取ろうとしているんだろう」と、どうしても余計な事を考えてしまう。

 後でサイトマネージャーとその話をしたのだが、「我々は淡々と試験会場を運営するだけですよ」と軽くたしなめられた。だが続けて「でも、人生の必要に一所懸命に取り組んでいる後ろ姿を見守る特権が、我々にはありますね」。

 たった一日、すれ違っただけのあのお婆さんに「幸あれ」と祈った冬晴れの日だった。

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